☆TRACKにのって☆

影屋

今日、私は影を売った。

子供の頃、影踏みをして遊んだ記憶がある。
いつも付きまとう影は、もうひとりの自分なのかもしれない。
私はいつも鬼だった気がする。

影を踏む鬼。

ある日、影に支配されていると思うようになった。
光が差し込むと同時にできる影が、やけに大きく感じた。
私は影が嫌いだった。
付きまとい、暗く重たくどこまでもついて来る影。

「こちらに買取のサインを。」
私から影が消えた。
生まれてからずっと共にあったのに、すがすがしい気分だった。
これからは、何にも支配されず私は私になれる。
ドアを開け、一歩踏み出した。
体が宙を浮いていた。

影がなくなると重力ですら、解放されるのだ。と思った。
私は本当に自由になったのだ。

試しに空を飛んでいこう。
鳥が近づいてきた。話しかけてきた。鳥と会話できるなんて・・・

空から街を見下ろした。
煌めいている。
クリスマスのイルミネーション。
私は街中に降りた。
大好きなウィンドウショッピングには理由がある。
ウィンドウに映る世界はもうひとつの世界で、
向こう側が本当の世界だと錯覚する。

いない。

いつもならウィンドウに映る自分の姿がない。
私は影を売った店にいった。
地図を何度も見ても、何度も探してもどこにもなかった。
私はもう大地に足を着いていない。
誰も私の声に応えてはくれない。

あなたはもう死んだんですよ。
影のない生なんてあるはずがないでしょう。
一緒に行きましょう。苦のない世界へ。
そのために当店にきたんではありませんか?
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by star-track | 2015-11-29 13:32