雨が降り出した。
子供の寝息が浅くて苛立つ。
その駅には屋根がなかった。
灯りの消えた電車がやってきて
顔を失った私たちは
どこまでも どこまでも 乗っていった。
終点まで払う切符代を忘れていたのに。
雨は止まない。
いっそう強く。
壊れていく音楽。
なにも流れない。
TVでは愛し方が流れ、
心から血を流した女が部屋の秩序を守ろうとする。
でも
もう化粧を落とすから
雨はそのうち止むだろう。
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by star-track
| 2015-12-14 17:31
草木が美しいのは 光を食べるから。
鳥が影をつくるのは 木の実を食べるから。
ライオンのあくびが恐ろしいのは 命を食べるから。
赤ちゃんが天使なのは 命を食べないから。
鳥が影をつくるのは 木の実を食べるから。
ライオンのあくびが恐ろしいのは 命を食べるから。
赤ちゃんが天使なのは 命を食べないから。
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by star-track
| 2015-12-13 21:57
号外が街を飛び交う。
「日本国民の顔は本日をもって終了します。」
デマだろうと気にもしなかった。
午前0時をまわった。煙草を3本立て続けに吸って寝ようとした。
TVを消し・・・ない?
いつも映る画面に自分の顔がなかった。
次の日も、号外が道を汚す。
「顔の配給は公民館へ!」
公民館に行くと、みんな同じ顔だった。
笑い出したくなるくらい不気味だった。どうしても”配給の顔”を受け取る気にはならなかった。
煙草を買おうといつものコンビニに入り「2個」といった。
「銘柄は?」
いつもなら通じるが、こちらには顔がない。
ある日CMで
「配給のお顔に物足りない方、個性豊かなお顔が出来ました。
ニューフェイス!」
今では顔はファッション。
ステイタス。
学生は制服と共に顔も揃える。
雑誌ではこぞってどの顔が人気か特集を出す。
顔を付け替えるのがブームになった。
「ちょっといい?」
警官だった。
「顔つけてないけどなんかした?」
え?!
「1週間以内に顔つけてね。防犯上。」
自分はどんな顔だったろう。
煙草に火を付け、タスポを見た。
配給でもファッションでもない、ただの自分の顔。
顔なんかなくても、煙草が旨いや。
なんにもない顔で、ひとり笑った。
「日本国民の顔は本日をもって終了します。」
デマだろうと気にもしなかった。
午前0時をまわった。煙草を3本立て続けに吸って寝ようとした。
TVを消し・・・ない?
いつも映る画面に自分の顔がなかった。
次の日も、号外が道を汚す。
「顔の配給は公民館へ!」
公民館に行くと、みんな同じ顔だった。
笑い出したくなるくらい不気味だった。どうしても”配給の顔”を受け取る気にはならなかった。
煙草を買おうといつものコンビニに入り「2個」といった。
「銘柄は?」
いつもなら通じるが、こちらには顔がない。
ある日CMで
「配給のお顔に物足りない方、個性豊かなお顔が出来ました。
ニューフェイス!」
今では顔はファッション。
ステイタス。
学生は制服と共に顔も揃える。
雑誌ではこぞってどの顔が人気か特集を出す。
顔を付け替えるのがブームになった。
「ちょっといい?」
警官だった。
「顔つけてないけどなんかした?」
え?!
「1週間以内に顔つけてね。防犯上。」
自分はどんな顔だったろう。
煙草に火を付け、タスポを見た。
配給でもファッションでもない、ただの自分の顔。
顔なんかなくても、煙草が旨いや。
なんにもない顔で、ひとり笑った。
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by star-track
| 2015-12-06 20:07
もう川を見てもなんとも思わなくなった。
本当のことを知りたかった頃
人を傷つけるということを
知らなかった。
全てを放棄し、
川の最期を見届けた。
”私”という入れ物から自由になって。
名前を捨てて。
名前なんか大嫌いだった。
呼ばれるたびに口から出る「イミ」
そんなもの見たくもない。
口から出るものなんて見たくもない。
だから見ていた。
川は風景を切り取る。
空がそこだけ大きくて、
水鳥たちが鏡を割る。
たくさんの命が漂い、
たくさんの思い出が流れてくる。
もう川をみてもなんとも思わなくなった。
川が流れることに
「イミ」なんてなかった。
本当のことを知りたかった頃
人を傷つけるということを
知らなかった。
全てを放棄し、
川の最期を見届けた。
”私”という入れ物から自由になって。
名前を捨てて。
名前なんか大嫌いだった。
呼ばれるたびに口から出る「イミ」
そんなもの見たくもない。
口から出るものなんて見たくもない。
だから見ていた。
川は風景を切り取る。
空がそこだけ大きくて、
水鳥たちが鏡を割る。
たくさんの命が漂い、
たくさんの思い出が流れてくる。
もう川をみてもなんとも思わなくなった。
川が流れることに
「イミ」なんてなかった。
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by star-track
| 2015-12-03 21:51
今日、私は影を売った。
子供の頃、影踏みをして遊んだ記憶がある。
いつも付きまとう影は、もうひとりの自分なのかもしれない。
私はいつも鬼だった気がする。
影を踏む鬼。
ある日、影に支配されていると思うようになった。
光が差し込むと同時にできる影が、やけに大きく感じた。
私は影が嫌いだった。
付きまとい、暗く重たくどこまでもついて来る影。
「こちらに買取のサインを。」
私から影が消えた。
生まれてからずっと共にあったのに、すがすがしい気分だった。
これからは、何にも支配されず私は私になれる。
ドアを開け、一歩踏み出した。
体が宙を浮いていた。
影がなくなると重力ですら、解放されるのだ。と思った。
私は本当に自由になったのだ。
試しに空を飛んでいこう。
鳥が近づいてきた。話しかけてきた。鳥と会話できるなんて・・・
空から街を見下ろした。
煌めいている。
クリスマスのイルミネーション。
私は街中に降りた。
大好きなウィンドウショッピングには理由がある。
ウィンドウに映る世界はもうひとつの世界で、
向こう側が本当の世界だと錯覚する。
いない。
いつもならウィンドウに映る自分の姿がない。
私は影を売った店にいった。
地図を何度も見ても、何度も探してもどこにもなかった。
私はもう大地に足を着いていない。
誰も私の声に応えてはくれない。
あなたはもう死んだんですよ。
影のない生なんてあるはずがないでしょう。
一緒に行きましょう。苦のない世界へ。
そのために当店にきたんではありませんか?
子供の頃、影踏みをして遊んだ記憶がある。
いつも付きまとう影は、もうひとりの自分なのかもしれない。
私はいつも鬼だった気がする。
影を踏む鬼。
ある日、影に支配されていると思うようになった。
光が差し込むと同時にできる影が、やけに大きく感じた。
私は影が嫌いだった。
付きまとい、暗く重たくどこまでもついて来る影。
「こちらに買取のサインを。」
私から影が消えた。
生まれてからずっと共にあったのに、すがすがしい気分だった。
これからは、何にも支配されず私は私になれる。
ドアを開け、一歩踏み出した。
体が宙を浮いていた。
影がなくなると重力ですら、解放されるのだ。と思った。
私は本当に自由になったのだ。
試しに空を飛んでいこう。
鳥が近づいてきた。話しかけてきた。鳥と会話できるなんて・・・
空から街を見下ろした。
煌めいている。
クリスマスのイルミネーション。
私は街中に降りた。
大好きなウィンドウショッピングには理由がある。
ウィンドウに映る世界はもうひとつの世界で、
向こう側が本当の世界だと錯覚する。
いない。
いつもならウィンドウに映る自分の姿がない。
私は影を売った店にいった。
地図を何度も見ても、何度も探してもどこにもなかった。
私はもう大地に足を着いていない。
誰も私の声に応えてはくれない。
あなたはもう死んだんですよ。
影のない生なんてあるはずがないでしょう。
一緒に行きましょう。苦のない世界へ。
そのために当店にきたんではありませんか?
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by star-track
| 2015-11-29 13:32